屋内消火栓設備の技術基準 その1|加圧送水装置・消火栓・配管
ポンプの設置場所から放水性能、水源量、立上り配管の呼び径まで。1号・2号・広範囲型2号の違いを図と表で整理した現場向け解説です。
1. 屋内消火栓の技術基準を押さえる順番
屋内消火栓設備は、水源・加圧送水装置・消火栓箱・ホース・配管が一体で働く設備です。「ポンプの能力だけ」「消火栓箱だけ」の確認では設計条件を判断できません。
2. 加圧送水装置を設ける場所
ポンプを用いる方式では、火災・浸水・凍結・機器損傷を受けにくく、点検や補修のために出入りできる環境が必要です。
所轄の基準に応じて不燃区画等で保護し、常用・非常照明、換気、排水、作業スペースを確保します。
ポンプ庫等で風雨・塩害などから機器を保護します。
水中ポンプで見るポイント
- 点検時に吊り上げられる位置と、開口部・作業スペースを確保する。
- 吸込ストレーナーを水槽底部から50mm以上離す。
- 水槽壁との離隔、流れの確保、吐出側の逆止弁・止水弁等を確認する。
- 機器の仕様によって必要な付属装置が異なるためメーカー資料も確認する。
3. 加圧送水装置の3方式と計算式
高架水槽方式
高架水槽と消火栓の高さの差(落差)で放水に必要な水圧を確保します。
| 区分 | 必要な落差の考え方 |
|---|---|
| 1号・広範囲型2号 | H = h1 + h2 + 17m |
| 2号 | H = h1 + h2 + 25m |
h1=ホース摩擦損失水頭、h2=配管摩擦損失水頭。高架水槽の下端から消火栓接続口までの落差を検討。
圧力水槽方式
水槽の圧力で送水する方式。必要圧力にはホース・配管の圧力損失、落差相当圧力を加えます。
| 区分 | 必要圧力 |
|---|---|
| 1号・広範囲型2号 | P = p1 + p2 + p3 + 0.17 MPa |
| 2号 | P = p1 + p2 + p3 + 0.25 MPa |
p1=ホース摩擦損失水頭圧、p2=配管摩擦損失水頭圧、p3=落差相当圧力。圧力水槽の貯水量には水槽体積の2/3以下の条件などがあります。
ポンプ方式
建物の階ごとの消火栓設置数に基づき吐出量を定め、損失水頭と落差を加えて全揚程を決めます。
| 区分 | 1栓分 | 2栓分(上限として数える) |
|---|---|---|
| 1号 | 150 L/min | 300 L/min |
| 2号 | 70 L/min | 140 L/min |
| 広範囲型2号 | 90 L/min | 180 L/min |
h1:ホース損失、h2:配管損失、h3:落差。定格吐出量150%時の全揚程が定格全揚程の65%以上であることなども確認。
4. 屋内消火栓の設置位置・放水性能
設置する消火栓の種類によって、水平方向にカバーすべき距離とノズルの放水性能が異なります。設置距離とホース長は別々の観点で確認します。
| 消火栓の種類 | 水平距離 | 放水圧力 | 放水量 |
|---|---|---|---|
| 1号 易操作性1号含む | 25m以下 | 0.17〜0.7 MPa | 130 L/min以上 |
| 2号 | 15m以下 | 0.25〜0.7 MPa | 60 L/min以上 |
| 広範囲型2号 | 25m以下 | 0.17〜0.7 MPa | 80 L/min以上 |
表示・始動・開閉弁
- 開閉弁は原則、床面から1.5m以下または天井に設置し、天井に設ける場合は自動式とします。
- 消火栓箱には「消火栓」と表示し、所定の赤色表示灯を設けます。
- ポンプの始動を示す赤色表示灯、視認性、放水器具の配置を確認します。
- 一人で操作する方式(易操作性1号・2号・広範囲型2号)は、ホースや収納方法に関する告示基準も確認します。
5. 必要水源量と消火栓の個数
水源量は消火栓の設置個数が最も多い階を基準にし、2栓を超える場合は2栓分を基準として算定します。
| 消火栓種別 | 1栓分 | 2栓分 |
|---|---|---|
| 1号・易操作性1号 | 2.6 m³ | 5.2 m³ |
| 2号 | 1.2 m³ | 2.4 m³ |
| 広範囲型2号 | 1.6 m³ | 3.2 m³ |
6. 配管・バルブ・管径の主な条件
送水経路の基本構成
- 原則として屋内消火栓設備専用の配管とする(性能に支障のない例外あり)。
- ポンプ吐出側の直近部分には逆止弁・止水弁を設ける。
- 吸水管はポンプごとに専用とし、ろ過装置、必要に応じてフート弁等を設ける。
- 管はJIS等の規格または消防庁長官の基準に適合する材料を用いる。
- バルブの開閉方向・逆止弁の流れ方向を表示する。
主配管の立上り管の最小呼び径
実際の配管呼び径は水力計算による算定結果を満たす必要があります。呼び径の最小値だけを満たしても、圧力損失が大きければ適合しません。
配管の耐圧・その他
設計時には、締切圧力の1.5倍以上の水圧に耐えること、適切な弁の配置、凍結・腐食・地震への対策を確認します。
まとめ|現場で先に押さえるポイント
- 加圧送水装置:ポンプ場所の保護、点検性、吐出量、全揚程を確認する。
- 消火栓:種類による水平距離、ノズル放水圧力・放水量、表示灯を混同しない。
- 水源:計算上の必要容量と実際に使える有効水量を区別する。
- 配管:バルブ、管材、管径、耐圧性能の条件を確認する。
同じ設備でも建物の用途・構造、設置年度、所轄消防機関の指導により追加条件があり得ます。技術基準と設置時の図面・仕様書をセットで確認しましょう。
参考法令・資料
- e-Gov:消防法施行令第11条(屋内消火栓設備) ↗
- e-Gov:消防法施行規則第12条(技術基準の細目) ↗
- 消防庁:平成25年消防庁告示第2号(屋内消火栓等の基準) ↗
- 東京消防庁:屋内消火栓設備の技術基準(消防用設備等の設置基準) ↗
本文・図表は独自に制作しています。現場での設計・改修・適合判断は、現行法令、最新の告示、所轄消防機関の運用基準およびメーカー仕様を優先してください。